残したいのは商店街という文化です


日頃から商店街を支えて頂いている地元のお客様、定期的に商店街に足を運んでくださる広域のお客様、遠方や海外からお越しくださる観光のお客様。

 様々なお客様に支えられ、私たち谷中銀座商店街は存在します。

時代と共に激変する商流の中で、今、商店街の存在価値が問われています。
時代の流れに適応しながらも、古き良き商習慣を大切に、商店街という文化を次世代に残していく、それが私たちの使命だと考えています。

人と歴史がすぐそこに

山手線日暮里駅西口を出てすぐ脇には、桜の名所でもあり、徳川慶喜公をはじめ、多くの著名人が埋葬されている「谷中霊園」があります。歩き出すとすぐに寺町の風情、徐々にお店が増え、急に視界が開けた場所が「夕やけだんだん」とよばれる夕日の名所。そして眼下には「東京にもまだこんな場所が…」と思うような下町の郷愁漂う景色が広がり、その中心にあるのが谷中銀座商店街です。

 

商店街には昔ながらの個人商店を中心に、様々な業種約60店舗が全長170メートルほどの短い通りに立ち並びます。今では昔からのご近所のお客様はもとより、様々な地域のお客様に訪れていただけるようになりましたが、お店とお客様のコミュニケーションの根底は昔も今も変わりません。お店とお客様、お店とお店、人と人と。とても狭い、下町の商店街だからこその程よい距離感が「谷中ぎんざ」の魅力であり、商店街のコミュニケーションの原点でもあります。

 

商店街沿革

谷中銀座商店街は昭和20年頃に自然発生的に生まれました。その後、様々な商流の変化を乗り越え、近隣型の商店街として発展。平成に入り、谷中・根津・千駄木の界隈が「谷根千」と呼ばれ注目が集まり、下町散策の中心地として、広域、遠方、海外からもお客様が訪れるようになりました。平成11年には商店街外観整備、13年にホームページ開設、18年には日よけの統一や袖看板の設置、20年には木彫り猫の設置、28年には商店街の公式キャラクター「せんちゃん」の誕生など、商店街全体のイメージ作りに力を注いで参りました。平成30年の調査(閑散期)では平日約1万人、週末約1万4千人のお客様が訪れています。平成3年調査時は平日、休日とも約8千人でしたので、現在では近隣のお客様はもとより、広域、遠方のお客様にもおいでいただける商店街へと進化を遂げています。

 

現在、そして未来へのバトン

平成28年に新旧理事の大きな世代交代が行われました。これまで「谷中ぎんざ」の発展の礎を築いてきた理事の方々が次世代にバトンを託したのです。40代の理事長を中心に、理事の多くは30〜40代、20代の理事も選出。新理事には古くからこの地で商売を営む二代目、三代目の若旦那、この谷中の地で新たに商いを始めたばかりの若々しいメンバーも多数加わりました。長年続けてきたイベントやお祭りを見直し、今では、企画、デザイン、設営までを、外部の力を一切借りずに全て自分達の手で行っています。また、商店街の枠に捉われず、近隣の商店街や店舗を営んでいる方々と協力し「一歩会」という新たな枠組みを作り、地域全体を盛り上げる取り組みも行なっています。時代の変化の波は加速するばかりです。ネットでお水一本が家に届く現代、商店街という組織はもちろん、個店やリアル店舗自体が生き残って行くには大変厳しい時代にさしかかっています。古き良き文化は大切にしつつ、過去を検証、改善すべきところは改善をし、私共もまた次の世代にバトンを渡せるよう、新たな歴史を築いていくために日々奮闘中です。

 

商店街(個店)の強みは、個性(専門性)、オリジナリティー(独自性)、お客様との信頼関係だと考えています。肉、野菜、魚、酒、洋服、着物、陶器、お茶等、店主は皆様々なジャンルのプロです。そのプロ達が、ショッピングセンターやスーパーには無いサービスと品揃えで、お客様との信頼関係を築いてこその商店街だと考えております。

日々買い回りでご利用してくださる近隣のお客様、定期的に谷中の地を訪れていただいている広域のお客様、東京に来た際にお立ち寄りくださる観光のお客様、その全ての方々に同じように満足をしていただくのは非常に難しい課題です。私達が今できることは、古き良き日本の商店街という文化を、「谷中ぎんざ」らしさを未来に残して行くこと、それがバトンを手渡された者の使命だと考えております。

「人と歴史がすぐそこに・・・」商店街の周囲には歴史ある寺社仏閣等も数多く、お買い物以外も楽しんでいただける恵まれた環境にあります。そんな環境も生かしつつ、10年、20年、30年先も「まだこんな商店街があったんだ」次の世代の方々にそう言っていただけるよう、より一層魅力ある商店街を目指して参りますので、どうか末永くご愛顧くださいますよう、宜しくお願い申し上げます。

 

谷中銀座商店街振興組合

理事長 福島正行